炎と花びら
出会った頃から、ノーマンは禁煙者だった。そして、最初の頃は誰でも吸える銘柄だったものの、ここ一年でコロコロ違うタバコを吸うようになった。それはどれも上級者向けのかなり強いものである。

「バレちゃいましたか、さすが名探偵」

ノーマンはパチパチとわざとらしく拍手をする。それに対し、アンは呆れたように息を吐きながら言った。

「こんなの、探偵じゃなくても匂いがキツいからあなたの体を嗅げば一発でわかる。禁煙しろとは言わないけど、本数を減らすか上級者向けのタバコじゃなくてもっと普通のやつにするかしないと、病気になるよ?」

「こればっかりはやめられないので、無理ですね。アンが僕のことを心配してくれるのは嬉しいですけど」

朝ご飯冷めますよ、そう笑ってノーマンはアンの肩に腕を回し、リビングへと連れて行く。彼の青い瞳を、アンはジッと見上げていた。

ワトソンというファミリーネームを聞くと、ミステリー小説が好きなファンは、あの世界的に有名な探偵の助手を思い浮かべるだろう。だが、アン・ワトソンは助手ではなく探偵である。
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