炎と花びら
パスカル村は大自然に囲まれ、人口数十人程度の小さな村だ。若者の多くは村から出て行ってしまうため、過疎化が進んでいることが問題となっている。
「ここがパスカル村……」
列車を降り、アンはかけていたサングラスを外す。都会しか知らないアンにとって、木々に囲まれたその村は、どこか異世界のように思えた。
「のどかでいいところですね〜」
ノーマンがグッと体を伸ばし、大きく息を吸い込む。人が密集し、車や工場の排気ガスで汚れた都会の空気より、山に囲まれたこの空気の方が息がしやすい。肺が喜んでいるような感覚をアンは覚えた。
「ノーマン、あたしたちは都会に疲れてこの村に移住を考えている夫婦という設定でパスカル村に潜入するよ。いい?」
落ち葉がまるで絨毯のように敷き詰められた道を歩きながらアンは言う。二人が一歩踏み出すたび、足元がザクザクと音を立てていく。
「大丈夫ですよ。そういう設定でいくと思って、偽装した結婚証明書も準備済みです!」