炎と花びら
ノーマンはかばんの中から、夫婦だと認められている証である結婚証明書を取り出す。美しいバラの絵が描かれた結婚証明書をチラリと見た後、アンは「よろしい」と言った。

パスカル村の出入り口である大きな門の中に、アンとノーマンは恐る恐る足を踏み入れる。すると、村の広場にいた人々の視線が突き刺さった。

「誰?」

「よそ者がいるよ」

ヒソヒソとそう話す声が聞こえてくる。すると、コツコツと何者かが近付いてくる足音が聞こえてきた。

アンが振り返ると、そこには薄い紫のロングドレスを着た老婆が立っていた。右手に杖を持っており、老婆はどこか驚いた顔を見せている。その視線をアンが追うと、ノーマンを老婆は見ていた。

「初めまして、若いお二人さん。私はこの村の村長をしているミネルバだ。よろしく」

皺だらけの手を差し出され、アンとノーマンはその手を握る。ミネルバはどこかギラついた目で言った。

「いいか?この村の中は自由に出歩いてもらっていいが、山の中にだけは入るな。わかったな」
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