炎と花びら
「山?」

アンが振り返り山道へと続く入り口に目を向けると、そこには侵入者を防ぐかのように屈強な男性が銃を手に見張りをしている。

その異様な光景に、アンはブルリと体を震わせた。



村に潜入という名で暮らし始めて数週間、アンはあることに気が付いた。ノーマンがタバコを吸う回数が減り、近隣住民の家にお茶をしに行くことが増えたのだ。

「ノーマン、最近タバコ吸ってないね」

アンが声をかけると、ノーマンは少し驚いた顔をした後、「はい」と言い笑う。

「何だか、タバコよりもお茶の方がおいしく感じられるようになって……。空気のせいですかね?」

「へえ〜……。あっ、じゃあ今日のお茶会あたしも一緒に参加していい?そんなにおいしいお茶なのか気になる!」

アンはノーマンに頼み、午後三時、隣に住むパーカー夫妻の家にお邪魔した。パーカー夫妻は六十代で二人ともふくよかな体型である。

「いらっしゃい、こちらへどうぞ」
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