あさまだき日向葵
塔ヶ崎くんが立ち上がり、砂を払った。

「あ、ごめん。さっき、押し倒しちゃったから」
「いーよ。あー、これ中まで入って、後であちこちから砂出てくるやつだ。はは!」

二人で塔ヶ崎くんに付いてる砂を払い終わると
「少し、歩こう」
差し出された手に、自分の手を重ねた。

「砂、大丈夫?」
「このへんの水道あるとこ、事前に調べたんだけど、足を洗うくらいしか想定してなかったな」
そう言って笑う。
脱がなきゃ取れないとこまで砂が入っちゃったのか。
街が少しずつ動き出した気配がして、二人きりじゃなくなったみたいで、寂しい。

「……綺麗だね、朝の海も」
さざ波が青の中でキラキラ白い。
塔ヶ崎くんの顔も日が映ってる。すごく、綺麗。

「海、見て下さあい」
「あ、だって!映って綺麗なんだよ」
「……まあ、いいや」
「塔ヶ崎くん、すっごい顔綺麗だよね。お肌ぴかぴかだし、美人!」
「……ちっちゃい頃は『女の子だったら良かったのに』って、よく言われた。……男の子で良かったよ。ねえ?」

なんて笑いかけられるから、戸惑う。美人なのに、格好よくもある。
そして、動揺すると、すぐに要らぬ事を口走る癖もあるらしい。……私。

「海は……彼女と来たことある?」
塔ヶ崎くんは、“え?”って顔でちょっと……呆れてる。気が、する。
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