魔法のいらないシンデレラ 3
「これに入りますか?」

中に手を入れて底を広げると、山下から色紙を受け取って手提げ袋に入れてみる。

その横に花束も入れると、持ち手を持ってみた。

「良さそうですね」
「ああ。ごめんね、ありがとう」
「いえ」

しばらく、妙な空気が二人の間に流れる。

「あ、えっと。企画広報課の皆さんって、瑠璃さんのことを、瑠璃ちゃんって呼んでらっしゃるんですか?」

小雪が、色紙のメッセージを思い出して聞いてみた。

「え?ああ、うん。瑠璃ちゃんが入社してきた時は、まだ総支配人と結婚してなかったしね。同期入社の奈々ちゃんと一緒に、瑠璃ちゃん奈々ちゃんって呼ばれてて…」
「そうだったんですね。私、また思い込んで、稜さんのこと誤解してました」

すみませんでした、と小雪は頭を下げる。

「は?何の事?」

山下が首をかしげるが、小雪は答えない。

「とにかく謝らせて下さい。重ね重ね、稜さんには申し訳ない事ばかり…」

下を向いたままの小雪を見ているうちに、山下はふと思いつく。
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