うそつきな唇に、キス
意外だと思ったことがどこからか漏れていたのか、睿霸に伏し目がちに軽く睨まれてしまった。
だって3人とも、怖いもの知らずな印象が強かったから。
……あと、失うものなど何もないと思っていそうな行動が。
「やけど、なんや安心しタわ」
「え?」
ふと吐かれた言葉であろうそれは、決して嘲笑や同族感などの意味が込められたものではなかったように思う。
「えるちゃんがさっきの言葉を吐いてまウほどの人間がおる過去があって」
きっと、額面通りの言葉ではないのだろう。
そうでなければ、こんな─────、
……こんなに、ゆるんだ顔を、しないと思った。
「僕モえるちゃんにさっきみたいな言葉いわれんように気をつけんとなあ。えるちゃんにあないなこと言われてもうたら、僕ほんまにしんでまう気いスるし」
「そんな心配、しなくていいと思いますよ」
「え〜、だって僕えるちゃんの逆鱗知ラんから怖いんよ。いツ地雷踏み抜いてまうかわからんし」
そうやって、眉間に皺を刻み考え込んでしまった睿霸に、本当に無用な心配なのになあ、と頬をかく。
だって、わたしがあの言葉を吐くために反射的に思い浮かべた光景は。
─────もし、睿霸が暴走族の子たちに言っていた言葉を、そのまま丸ごと、若サマや琴、睿霸に言われたらと想像したら、咄嗟に喉を割って出てきてしまったものだから。