恋の仕方、忘れました
「そっかー……主任も……そっかー」
主任も私のことを想ってくれていたことが嬉しくて、ついニヤけてしまう。
そんな私を横目で見ながら、「シートベルト」と放った主任は突然車を発進させた。
もう話は済んだのだから、早く家に帰れよってことなのだろうか。
もう少し一緒にいたいのに。と肩を落とすも、今車が向かってる方向はさっきのコンビニと真逆だった。
「主任が早く気持ちを伝えてくれてたら、彼女がいないことももっと早くに分かって、こんなに苦しむこともなかったのに」
窓の外を眺めながらぽつりと愚痴を零す。
結果はこれで良かったけれど、恋というのは非常に体力を削るもののようで、ここ最近の私は疲れが異常に溜まっていたみたいだ。
車の揺れが心地よくて、うとうとしてしまう。
ふと横にいる主任に視線を移すと、肘掛けに頬杖を付きながら信号待ちをする彼の横顔が、薄暗い車内にも関わらずあまりにも綺麗で、本当に夢の中にいるんじゃないかと疑った。
「お前に言われなきゃ、俺から言うつもりはなかったけどな」
主任は正面を向いたまま、小さく口を開く。
「さっきも言ったけど、妹の件もあって今は彼女とか考えてなかったし、それ以前に社内恋愛が無理」
「…じゃあどうして、」
「でもあの日からやけにお前が気になるし、なんだろな。思ってた以上の奴で、ハマってしまったとしか言いようがないけど…」
「……泣いてもいいですか」
ぽつりぽつりと語る主任は、もうさっきまでの感情的な彼でも、普段の無愛想な彼でもなくて、至って冷静。
だからこそ、きっとこれは彼の本心なのだと思った。