恋の仕方、忘れました
夢なんじゃないかと疑ってしまいそうになるこの状況に、思わず口元を手で覆った。

それでも、はっきりとした言葉をくれない主任に「私のこと好きなんですか?」と問いかける。
しかし、返ってきたのは「……まぁ」という曖昧なものだった。



「主任、全然素直じゃない」


「……こういうのは普通言わないだろ」



いや、言ってよ。とツッコミたくなるのを我慢した。だって、もうこれは肯定したようなものだ。

大人の恋愛って、言葉でなく態度なのかもしれないと、経験が浅いながらもそう悟った。



「いつからですか?」



ならばこの質問になら答えてくれるだろうと小首を傾げると、主任は未だ照れながらも私と視線を重ねる。



「…ずっと、気になってはいた。普通に…まぁ、綺麗だし、仕事も出来るし。枕営業してるって言われてるくせに、実は処女だし」


「あ、また言った」


「その歳で恋愛下手の拗らせ女で、案外アホだし、ギャップが凄い」


「それ貶してますよね」



さっきの私の告白を根に持っているのか、主任の愛情表現もかなりひねくれている。
それでも気持ちが伝わってくるのは、目を細め、愛おしそうに私を見るから。

主任は「放っとけないっつってんの」と零すと、相当恥ずかしかったのかまたまたハンドルに突っ伏した。



「そんな素振り一切見せてくれなかったですよね」


「当たり前だろ。簡単に部下口説かねーわ」


「……でも手は出したんですね」


「……悪い。なんか我慢出来なかった」



もしかして主任もお酒を飲むと理性を失うのでは。なんて、私の口からは決して言えないけれど。
そんなことより珍しく謝ってくる主任が可愛く見えて仕方がなかった。

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