恋の仕方、忘れました
胸を張って彼の隣にいたい。そうなるには、少しでも
不安要素を取り除いておきたかった。

今凄く満たされているけれど、実はまだ胸のどこかにモヤモヤがある。
それを主任にぶつけるなら今しかないと、私はゆっくり口を開いた。



「主任、本当に私で大丈夫ですか。私、声掛けてきた男にホイホイついてっちゃうような女ですよ」


「……その男、ダークネスとかいう裏組織にピストルで撃たれねーかな」


「え?ダーク…って、え?」



結構真面目に尋ねているのに、主任から返ってきたのは中二病のような台詞。
透かさず聞き返すけど、彼はスルーだ。



「そ、それに私、人の彼氏と寝ちゃうような女ですよ」


「次したら裏組織にピストルで」


「ねぇ待って、主任さっきからふざけてます?」



仕切り直して再び尋ねると、またもやふざけた回答をする主任。
さすがに意味が分からなくて、握っている手にぎゅっと力を入れてみたけど、ビクともしなかった。



「いや、なんか妹が最近ハマってる小説にそういうのが出てくるらしいんだけど、何故か今思い出した」


「え、何で今?やっぱり主任ってシスコンですか?……って、え、待って、痛い!嘘ですごめんなさい!」



この状況で妹の話を出してくる主任は、やっぱりシスコンなのかもと本気で心配したけど、私の発言が気に入らなかったのか、今度は主任が手を力いっぱい握ってきたから慌てて謝罪した。



「てか、んなしょーもないこといちいち言うなよ。全部分かっててこうしてるんだから」



ヒリヒリする手を撫でている私に投げかけられたのは、そんな台詞。

どうやらさっきの中二病発言は決してふざけてる訳ではなく、私を気遣ってのものだったらしい。
主任なりの、気にしてないよアピールだったのだ。

私の全てを受け止めてくれる主任は、本当に器が大きい。



自然と目頭が熱くなるのを感じた。

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