恋の仕方、忘れました
「まぁでも、今度から俺以外の前で酒飲むなよ。接待でも禁止」
「承知しました…。私、自分がこんなにお酒に呑まれるタイプだと思わなかったです…」
前はこんなに弱くなかった気がするんだけど、歳のせいか、疲れているのか。最近の私は本当に酒癖が悪い。
さすがに主任とこういう関係になったのだから、他の男の人と寝ることなんてないと思うけど。
それでも自分の意志の弱さには嫌気がさしていたので、当分お酒は控えようと思う。
「……まぁ、そういうところも放っとけないんだけど」
自分の過ちを思い出して軽く落ち込んでいると、横からそんな呟きが聞こえてきた。
この人は私をどれだけ甘やかすのか。
そんなに私をズブズブに溺れさしたら、もう抜け出せなくなるのに。
「どうしよう。主任が神様みたいで、やっぱり私には勿体ない気がしてなりません」
「…お前なぁ、」
主任は少し怒りを含んだ声を放ち、横目で私を睨んだ。
自分でもしつこいのは分かってる。けど不安なんだもん。理想は高くないと思っていたけれど、理想を遥かに超えるの人と一緒にいられるなんて、そんな簡単な世界じゃないって思ってしまうんだもん。
涙目の私を見て、主任は本日何度目か分からない大きな溜息を吐き出した。
「じゃあ、やっぱやめる?」
「え」
「この話、なかったことにするか」
「……」
運転しているから当たり前なのかもしれないけれど、主任は目も合わしてくれず、そんな台詞を淡々と並べる。
傍にいることを躊躇したのは自分のくせに、いざ主任にそう言われるとダメージが大きい。
恋をする前の私は、好きな人と一緒にいられるだけで幸せなのだと思っていたけれど、実際は、心が通じても常に不安が付き纏うものなのだと、この歳になって初めて知った。