恋の仕方、忘れました
もし婚約しましたとか、子供が出来ましたとかって言われて、私は素直に祝福出来るだろうか。
そして裕真さんが義兄になることに耐えられるだろうか。
そんなことを考えている内に、あっという間にリビングのソファに座らされる。
すぐに話を切り出されたらどうしようかと焦ったけれど、お姉ちゃんはそのままひとりでキッチンに向かったので恐らく飲み物か何かを用意してくれるのだろう。
緊張して、指先が冷たい。
心臓も煩いし、何なら少し吐き気もする。
お姉ちゃんにバレないように溜息を漏らし、気を紛らわすようにきょろきょろと辺りを見渡した。
───そこで、私は何故か違和感を感じた。
最近この部屋に来ていなかったけれど、家具の場所は前と何も変わっていない。
テーブルもソファも、前のものと同じだ。
ふと、リビングにある、寝室に繋がるドアが目に入る。
そこにも私が裕真さんと身体を重ねてしまった寝具がそのまま残っているのかと思うと胸が痛かった。
それにしても、何だろこの違和感。
何かがおかしい。
「じゃーん。今日のドリンクは希子の好きなタピオカミルクティーでーす」
その違和感の原因を探っていると、キッチンから戻ってきたお姉ちゃんが嬉しそうに二つのグラスをテーブルに置いた。
はっと我に返った私は、たった今持ってきてもらったタピオカミルクティーを手に取り、一口飲み込む。
「あ、これ今なかなか手に入らないやつ?凄く美味しい」
「そうそう。わざわざバイクで隣の県まで行ってね、業務スーパーで買ってきたんだよ」
「へー、隣の県まで」
「どうしても希子に飲ませてあげたくて。仕事、忙しかったんでしょ?」
私を気遣ってくれるお姉ちゃんに、ちくりと胸が痛んだ。
お姉ちゃんごめんなさい。実は仕事が忙しかった訳じゃないんだ。
私がお姉ちゃんを避けてただけなんだよ。
嬉しいけど、こんなことされたら申し訳ない気持ちがどんどん膨らんで余計言い出せなくなる。
お姉ちゃんの変わらない優しさに目頭が熱くなるのを感じたけれど、深呼吸して何とか泣かずに済んだ。