恋の仕方、忘れました

「今日はこのために参加してくれたんですね」



袖で涙を拭いながらそう伝えると、主任は壁から背中を離し、私の頭に置いていた手をスラックスのポケットに突っ込み此方へと体を向けた。



「半分はそれ」

「半分?」

「あと半分は監視」

「……監視」



ああそうか。私がお酒を飲むから、羽目を外さないように見張るって言ってたっけ。

確かに酔っ払ってしまったから、こうして主任が傍にいてくれて良かったけど。
でも反対に言えば、主任がいなければこんなにも飲まなかった。


主任がお局達と仲良く会話していたことを思い出して、また少しモヤっとする。

それが私のためだったとしても、やっぱり少し妬ける。相手がお局だから尚更だ。



「主任」



薄っすらとぼやけた視界で主任を捉えれば、小首を傾げた彼が「ん?」と小さく声を漏らす。

その油断した隙を狙って、主任の襟元をきゅっと握った私はそのまま彼との距離を詰めると、ぐっと背伸びをして彼の顔に自分の唇を近付けた。



「……あれ、」



けれど、不意打ちでキスしてやろうと思ったのに、不発に終わった。届かなかった。

背の高い主任だから、空気を読んで少しくらい身を屈めてくれると思ったのに。絶対に察してくれると思ったのに。



「主任、私いま──…」



キスしようとしたんですよ。そう、大胆に発言しようとすれば。



「酒くせーな」



小さく舌打ちを打たれ、冷たい視線が私を見下ろす。


あれ、おかしいな。今って凄く、甘い雰囲気だと思ったのに。

これって、なんか……



「成海、俺は怒ってんだけど」

「……」




なんかやばい?

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