恋の仕方、忘れました
「成海」
呟くように名前を呼んだ主任は、私を組み敷いたまま視線を逸らす。
「お前はすぐに俺のことを気遣って本音を言わなかったり、勝手に悩んで暴走する」
「……」
「けど、どんなに振り回されてもお前と離れる選択肢はないし、それが可愛いとすら思える。お前の隣は飽きない」
「……」
「寧ろアホなところは俺にしか見せないでほしい」
「……」
「お前は気付いてないかもしれないけど、その辺の男と会話してんの見るだけでもイラつく」
「……」
「クソハゲなんか、目も合わせんなって思ってる」
「……」
「それなのに酒飲んでへらへらするから、ずっと落ち着かなかった」
「……主任」
この人は、こんな小っ恥ずかしい台詞を簡単に口にする人じゃない。
それなのに、視線を外したまま呟くように言葉を紡ぐ彼は、相当照れているように見える。
お局達と楽しそうにしているように見えて、実はずっと私のこと考えてくれてたんだ。
それなのに私は、拗ねてムキになってお酒を飲んで。それでも主任は私を庇ってくれたんだ。
「俺が怒る理由、分かる?」
これが説教なら、優しすぎるよ。
「…分かります。ほんとごめんなさい」
眉尻を下げながら、そっと手を伸ばす。
主任の頬に手を添えると、逸らされていた瞳がゆっくりと此方に向いた。
「今度からお酒は二杯までにします」
「それでも多いけどな」
不貞腐れながらも徐々に影を落とした彼は、私の唇を塞いだ。