恋の仕方、忘れました
主任が私の乱れた髪を掬う。それを指に巻き付けて「シャワー浴びる?」と尋ねてくる。
「まだ動けません」と首を横に振ると、満足げに微笑んだ主任は私の横に寝転んできた。
黙って腕を差し出してくるから、遠慮なくそこに頭を預けると、そのまま抱きしめられる。
車に乗ってる時もそうだけど、主任は手を繋ごうだとか、誘うような言葉は言わない。
それでも私が簡単に喜んでしまうようなことを、サラッとしてくれる。
付き合わなければ絶対に知ることが出来なかった甘い一面。こんなの、独り占めしたいと思うに決まってる。
「主任」
「うん?」
「……やっぱ何でもないです」
毎日こうして一緒に寝られたらいいのに。
そう言おうとして辞めた。結婚を急かしているように聞こえたら悪いと思ったから。
「なに」
「いや、幸せだなーって思ったのを伝えようとしたんですけどね、ちょっと恥ずかしくなっちゃって」
「……ふうん」
付き合い始めたばかりのとき、結婚を意識しとけと言った彼は、今も同じ気持ちでいてくれているのだろうか。
私の方は、その気持ちが膨らむばかりで困る。
毎日忙しくしている主任を、近くで支えられたらいいのにと考えてしまう。
まぁ、今は支えるよりも疲れさせてしまう事の方が多いのだけど。