恋の仕方、忘れました
「成海」
「……はい」
彼の腕の中、その気持ちよさにうとうとしかけていれば、ふいに声をかけられる。
「そろそろお前のご両親に挨拶行きたいんだけど」
「…………へ?!」
主任が紡いだ言葉に、一気に眠気が覚めた。
がばっと顔を上げて彼の顔を見れば、暗闇の中綺麗な形をした切れ長の目と視線が重なる。
「結婚意識しとけって言ったの覚えてる?」
「……」
「そろそろ準備し始めてもいいかなって」
「……」
「だめ?」
「だめ……じゃない。全然だめじゃないです」
私の考えていたことがバレたのかと思うくらいのタイムリーな話題に、ぱちぱち瞬きを繰り返しぽかんとしていれば、彼はゆるりと口角を上げた。
「まだこういう関係になって少しだけど、何年も一緒に仕事してるから信頼関係も築けてる。もうお前のこと知り尽くしてるつもり」
「……」
「だから俺の事信じて、ついてきてほしい」
もうこれはちゃんとしたプロポーズなんじゃないかってくらいの台詞に、自然と目頭が熱くなった。
私達の付き合いは、まだたったの数ヶ月。
それなのに、しっかりと先を見据えてくれる主任に、嬉しさのあまり興奮して上手く言葉が出ない。
ねぇ主任。主任のためならどこにだってついていくし、何があっても信じるよ。
もう何があっても不安にならないって約束するよ。