恋の仕方、忘れました
ホテルに向かうタクシーの中で、もう二度と男の人とサシでお酒を飲まないと強く誓った。
どうやら私はアルコールが入ると押しに弱い尻軽な女になってしまうみたいだから。
しかもまた彼女もち。罪悪感が無いわけじゃないけど、主任に「彼女いますよね?」と確認する勇気もなかった。
今更いるってカミングアウトされたところで、じゃあこの話は無かったことで、なんて言える気がしなかったから。
こんな歳まで処女を守っていたから、当然ラブホテルに入るのも初めてで、話には聞いていたけどビジネスホテルと全く違う部屋の雰囲気にちょっと怖くなった。
お酒お酒と言いながら、正直もう酔いなんてとっくの前に醒めていたから余計に戸惑う。
部屋の入り口で突っ立ったままでいると、主任は振り返って「どうした?やめとくか?」と、こんな状況になってから逃げ道を作ろうとしてくれる。
もう腹を括るしかない。と、小さく首を横に振って部屋の奥に進んだ。
「さ、先にシャワー浴びてきていいですか」
台詞は棒読みだし、声は裏返るし、明らかに緊張している私を見て主任はフッと笑うと「どーぞ」と答えながらジャケットを脱ぐ。
その仕草には余裕が見えるから、もしかしてこの人はこういうのに慣れているのかもしれない。
職場ではあんなに無愛想なのに実は遊び人だったなんて、密かな主任ファンが知ったらショックを受けるだろう。