恋の仕方、忘れました

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“なんで黙って帰った”






例の人物からこのようなラインが送られてきたのは、朝の6時のこと。
昨日の出来事が彼の記憶にしっかり刻まれていることに酷く落ち込んだ。


何て返せばいいのか分からず既読スルーを決め込むも、会社に行けば必ず顔を合わす。

ならばいっその事、私の記憶がなくなったことにすればいいんじゃないかと思ったけれど、現実はなかなか厳しい。







「───で、どうだった?成海」


「ど、どうだった……とは、えっと、何のことかなーなんて……アハハ」


「……へぇ。記憶がありません、ってか」


「……まぁ……はい……」




出社直後、廊下を歩く私を無理やり会議室に引きずり込んで距離を詰める主任に、心の底から怯えていた。


まさかこんなに早く捕まるとは思ってなくて、ちゃんとした言い訳を考えていなかったから言葉に詰まる。

記憶がありません作戦で逃げ切るにしても、食事をご馳走になった記憶まで無くしてしまってはかなり嘘くさいし失礼にあたるので「昨日は大変ご馳走になりました」と、それだけ伝えると「そういうことを聞いてんじゃねぇよ」と透かさず突っ込まれた。

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