恋の仕方、忘れました
「主任、飲んでくださいよ。帰りは私が運転しますから」
「事故車にしたくないから遠慮しとく」
「大丈夫ですよ。私こう見えて反射神経はいい方なので、突然何かが飛び出してきても躱してみせます」
ハンドルを回すふりをしながら笑顔で答える私に、主任はわざとらしく大きな溜息を吐いた。
「じゃああのハゲからの誘いも上手に躱せたら良かったのにな」
「……ハゲ、ですか?」
「うん、くそハゲ」
一瞬頭にハテナが浮かんだけれど、誘いという言葉にピンときた。
「もしかして課長のことですか?」
「そう、そのハゲ。女口説く暇があるなら自分で仕事しろよまじで」
珍しく愚痴っぽい主任は、課長に相当腹が立っているのかかなり口が悪くなってる。
本当はお酒を飲みたい気分なのか、アルコールのページを一通り見てから「ノンアルにしよーかな」なんて言いながら私にメニューを渡した。
「自分で…ってことは、結構仕事押し付けられてる感じです?」
「じゃないと俺が残業なんかするわけないだろ。自分の仕事だけだったら余裕で定時に帰れるわ」
ぶつくさ文句を言う主任が少し可愛く思えて、思わず口元を手で覆うと怪訝な目を向けられた。