恋の仕方、忘れました
頭の中は「帰りたい」でいっぱいのはずなのに、身体は既にホテルにあった。
ここのホテルは以前主任と入った部屋よりも古くて、部屋も小さいしあまり煌びやかではない。
どちらかといえばビジネスホテル寄りの、シンプルな部屋だった。
ラブホテルだからといって、全てがいやらしいわけではないことを初めて知った。
本当は今すぐにでもこの部屋から出ていきたいのだけれど、お酒を持っていたせいでそろそろ腕が限界で、とりあえず一旦ビニール袋を入口付近の床に置いた。
「ねぇ、もっとこっちにおいでよ」
イノケンさんは、いつまでも入口付近で突っ立ったままでいる私に声をかける。
イチャイチャプレイを要求してきた割に、全然近付いてこない私を不思議に思ってるに違いない。
もうこの際、やっぱり無理ですって正直に言うべき?
声をかけてきたのは向こうだけど、ここに誘ったのは自分なのにそんなこと許される?
もしそれを言って殴られでもしたらどうしよう。仕事にまで影響が出るからそれだけは避けたい。
見た感じイノケンさんは華奢だけど、まだ少し酔ってる私が男の人の力に勝てるとは思えないし。
でも見た目はチャラいけど口調は優しいから、案外いい人かも。ううん、こういう人がキレるとこわいっていうし。