恋の仕方、忘れました
「…よし、とりあえず人生相談から始めようか。ほら、これ飲みなよ」
そう言ってイノケンさんが差し出してきたのは、さっき私がコンビニで買ったカップ酒。
丁寧に蓋を開けてくれて、それを渡された私はぐびぐびと口に流し込んだ。
「実はたった今、好き人に告白してフラれました」
「…そっか。それはつらいね」
「だからその人を忘れられるくらい優しく抱いてほしいんです」
「いや、そんなに泣かれたら集中できないから」
イノケンさんは頭をぽりぽりと掻きながら苦笑する。
そりゃそうだ。こんな女に興奮するはずがない。
完全にそういう気分じゃなくなったイノケンさんは、ポケットから煙草を出して口に咥えると、ライターで火をつける。
煙草を咥えたまま今度は空いた手でもうひとつのカップ酒を取り出すと、それを躊躇なく開けて自分の口へと運んだ。
「話聞いてあげるから、俺に話してみ?」
どうやらこの人は二重人格らしい。
さっきまではナンパモードだったのかチャラさ全開だったのに、突然お兄さんのような落ち着いた雰囲気を醸し出す。
それに甘えるように、私はこれまでのことを全部話した。
裕真さんのことから主任のことまで、全て。
意外にも真剣に聞いてくれて、それが嬉しくてまたお酒が進んだ。
「……なるほどね」
「ということなので、私のこと優しく抱いてくれませんか。そしたら主任のことも忘れられるかもしれないから」
「いや、その感じだと無理でしょ。答え出てんじゃん」
「やってみないと分からないじゃないですか。もしイノケンさんのことを好きになれたら、やっぱり主任への気持ちはその程度だったんだなって明日から強く生きれそうだし」
「なにそれクソ重いね」
「……そうですよね。それにやっぱり私は主任に抱かれたい主任に会いたい帰りたいどうしよう」
「急に失礼だな。ち〇こ萎えるわ」
見た目バカそうなのに伏字使ってくるイノケンさんは、大きな溜息を吐き出した。