恋の仕方、忘れました
外に出てすぐに、またポケットのスマホが震えていることに気付く。画面を確認すれば、やっぱり彼からの着信だった。
伝えたいことはまだ纏まってないし、物凄く緊張するけどそんなこと言ってられない。早く出なくちゃ。
一度大きく深呼吸をして、通話ボタンを押した。
「…もしもし主に」
『いい加減にしろよこのバカ女!!』
まず一番に謝ろうと思っていたのに、それは主任の怒鳴り声によって遮られた。
本当に主任の声なのかと思うくらい焦りと怒りが混ざってる。普段顔色ひとつ変えない彼が、こんなにも余裕をなくすことがあるのかと驚いた。
「主任でも声を荒らげることがあるんですね」
『ふざけてんのか』
「いいえ、ちょっと嬉しくて」
『は?』
「ふ、ふふふふふふふふ」
『何笑ってんだよ』
主任の焦りは、私を心配してのことだと思うと嬉しくてつい笑い声が漏れる。
そんな私とは反対に、主任の怒りはピークのようだった。
「主任、今すぐ会いたいです」
『だからどこにいるんだよ』
「えーと、今はT駅の近くです」
『その辺の店に入っとけ。すぐ行く』
主任はそれだけ言うと、すぐに電話を切ってしまった。
本当にこれから会えるんだ。やっと真実を聞けるんだ。
聞けるかどうかは私にかかっているけれど、せっかくイノケンさんに背中を押してもらったのだから、今度は逃げずにちゃんと向き合いたい。