恋の仕方、忘れました
「お前危なっかしいから、取り敢えずこっち来て」



主任はそう言うと、私の腕を掴んで歩き出す。

さすがにもう逃げたりしないのに。なんて思いながらも、握られていることにドキドキして、心臓が爆発しそうだった。好きだと認めた後だから余計に。

これが手なら尚良かったのに。と、贅沢なことを考えている内にたどり着いたのはパーキング。

そこで見付けたのは本日二度目の主任の車だった。

助手席のドアを開けた主任は「乗って」と私に指示する。

言われるがまま乗り込むと、どうやらさっき私が勝手に出ていったことを根に持っているのか、主任は「逃げたら轢きコロスから」と非常に物騒な事を言ってからドアを閉めた。


すぐに運転席に乗ってきた彼は、シートに座った瞬間大きな溜息とともにハンドルに突っ伏す。



「主任……?」


「……生きた心地がしなかった」



どうしよう。さっきから感情的な主任に驚くばかりだ。
勿論こんな主任を見るのも初めてだったから、さすがに心配になって声を掛けると、返ってきた台詞になんだか泣きそうになった。

だってそれって、私をそれくらい心配してくれてたってことでしょ?
必死で私を探してくれてたんでしょ?

そんなの、元々主任に心を奪われてた私からしたら幸せ以上のなにものでもないもん。
< 87 / 188 >

この作品をシェア

pagetop