恋の仕方、忘れました

「もう何年もそういう人はいないけど、何でお前の中で勝手にそうなってんの?」



そう付け加えられたことによって、曖昧だったものが明確になる。

けれど、はっきりとした答えが分かったというのに何故か素直に喜べなかった。




「うそだ…」


「は?」


「嘘つき!」


「お前上司に嘘つきはないだろ」



私が信じようとしないから、主任はむすっとして私を睨む。

確かに期待していなかったわけではない。イノケンさんの言う通り、彼は彼女がいるのに他の女を抱くような人じゃないと、心のどこがでそう思っていた。

でも、だったら。



「同棲してる彼女がいるっていう噂を、何度か耳にしたことがあるんです」


「……あー、なんか色んな奴に彼女がいるかどうか確認されるのが面倒だったし、歳をとるごとに結婚を考えてるかとかよく聞かれるようになったから、適当にそんな事言った記憶があるようなないような」


「ほ、ほら!嘘つき!」


「いや、お前も噂を信じるなよ。初めから俺に聞けばいいだろ。ホウレンソウは大事だぞ」


「主任みたいな完璧な人に彼女がいない方がおかしいじゃないですか!ばか!イケメン!存在が罪!」


「褒めてんのか貶してんのかどっちだよ」


「褒めてますよ!非の打ち所がありません!」



なんかもう恥ずかしいやら嬉しいやらで感情がぐちゃぐちゃで、照れ隠しで主任の肩を小突こうとしたら、頬杖をついていない方の手で簡単に躱された。

「買い被り過ぎだろ」と放つ彼は何故か笑っていて、その笑顔に危うくまた好きを叫びそうになった。
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