恋の仕方、忘れました
あぁ、やっぱりダメだ。何をしてても主任が私の頭を支配して、欲が出る。
彼女がいないと分かったから尚のこと。
今までの我慢が爆発してる。

もう主任の横に他の人がいるなんて想像したくもないし、こうして主任の本性を知ってるのは私だけであってほしいっていう独占欲がどんどん強くなる。

イノケンさん、私ちゃんと聞いたよ。そのお陰で誤解が解けたよ。
だからもう一度この気持ちを伝えてもいいのかな。



「主任……………………」


「…なに」



未だ頬杖をついて私をじっと見据える彼は、私がなかなか言い出さないからか怪訝な顔をしている。

静かな車内に響く主任の低い声はやたらと色気を含んでいて、今主任と二人きりというこの状況に、急に怖気付く。

改めてこの人は容姿に頭脳、包容力に長けている凄いお方なのだと感じ、私には勿体なすぎてこんな簡単に気持ちを告げてもいいものなのかと、ここにきて迷ってしまう。

今度こそフラれたら、仕事も気まずくなる。
上司に告白したなんてお局に知られたら、笑いの的になる。

じゃあ、また同じことを繰り返すの?
彼女がいないって分かったのに、見てるだけで幸せって本気で思える?



──そんなの、思えるわけないじゃないか。



「成海?」
「私、主任が好きです」



主任が口を開くのと同時だった。

もしかして聞こえなかったかも、と思ったけれど、主任を見ると意外にもぽかんとしていた。

さっき電話でも伝えたはずなのに、まるで初めて聞いたような、そんな感じ。
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