恋の仕方、忘れました

「…本気?」



ゆっくりと口を開いた主任は、何故だか疑いの目を向けてくる。

もしかすると迷惑だったかもしれない。
そう思うとここから逃げ出したくなったけれど、さっき主任に逃げたら轢きコロスと言われたのを思い出してぐっと堪えた。


逃げてどうする。
信じてもらえないのは予想通りだ。
だって、始まりが始まりだったんだから。



「この前までお姉ちゃんの彼氏のことが好きって言ってたから、信じてもらえないかもしれないですけど…」


「……」



何も言わない主任の顔が怖くて見れない。
思わず泣いてしまいそうで、鼻がツンとした。



「好きになって……しまいました……」



消え入りそうな声でそう言うと、主任は小さな溜息を落とした。



「…なぁ、なに同じことしてんの。前にも言っただろ。お前やっぱり優しく抱いてくれたら誰でもい…」

「違います!」



何を言われるのか想像がついたから、急いでそれを遮った。
これもまた予想通りの反応なのに、本人の口から聞くとやっぱり傷付く。

でもここで諦めたらいけないと思った。
そうじゃないって自分でも分かったからこうして告白したんだもん。そんな簡単なものじゃないって自信持てないでどうするの。


こうしてる間も主任は、私が真剣な顔をしているからか何も言い返してこない。
私を突き放しているのかと思ったけど、次の言葉を待ってくれてる彼の大人の対応にまた心を奪われた。



「ほんと、違うんです。優しく抱かれたからじゃない」


「……じゃあ、何」



俯く私に掛けられた声は、驚くほど優しかった。

きっとあの優しい目を向けられてるのかと思うと、涙を我慢せずにはいられなかった。

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