恋の仕方、忘れました
主任は「はぁー」と大きく息を吐きながら、片方の腕で目元を隠しシートにドカッと背中を預けた。



「主任、もしかして照れてます?」


「……るせーな」



鬱陶しそうにする主任はどうやら照れているようで、それが何だか可愛くてガードが緩くなってる脇を突っついてやろうと手を伸ばす。

けれど、どうやら私の企みはバレバレだったらしく、呆気なくその手は捕まえられてしまった。



「すみません手が滑り───…」



仕返しされるのが怖いからとりあえず謝っておこうとしたものの、掴まれた手をそのままぐんと引かれて主任の方へ身体が傾く。

気付いた時には目の前に主任の顔があって、思わず息を飲んだ。



「なぁ成海」


「は、はい」



息がかかりそうなくらいのその距離に、驚きと動揺で固まる私を見る主任の目は鋭い。

そんなに脇をくすぐられるのが嫌だったのかな、なんて考えていると。



「まさか事後じゃないよな」


「へ?」



一瞬、主任から出た台詞の意味が分からなくて、思わず変な声が漏れた。

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