紫の香りに愛されて ゆきずりのコンサルタントに依頼したのは溺愛案件なんかじゃなかったんですけど
寝室を見回している私に、男がネクタイを緩めながら聞かせるともなく話し始めた。
「時間の無駄になる物は置かない主義だ。時間を失う物はたいてい金の無駄だからな」
徹底した合理主義者。
こんな人からしたら、薔薇園なんか無駄そのものとしか思えないんだろうな。
「俺は大学在学中に司法試験に合格し、留学して二十五でMBAを取得した。そのための勉強時間はいくらあっても足りなかった。だが、その努力のおかげで今は金で時間を買えるようになった。金で解決できることは迷う必要がない今の生活は俺に合っている。億単位で稼げるようになったのはさすがにここ数年のことだが、大学以来、右肩上がりに実績を上げてきたことは事実だ」
外したネクタイをハンガーに掛けようとしている男の背中に向けて私は何気なくつぶやいた。
「才能があっていいですね」
褒めたつもりが、男はいきなり振り向いて私に迫ってきた。
「馬鹿にするな」
え?
ネクタイがするりと床に落ちた。
「才能のあるやつなんてこの世には星の数ほどいる。だが、成果を出している人間は一握りだ。その違いはなんだか分かるか」
私は男の剣幕に押されて首を振るのが精一杯だった。
「あんたには分からないだろうな」
あからさまに馬鹿にされてるのに何も答えられない自分も情けない。
「苦労ですか?」
でまかせの答えに、男が口元をかすかにゆがめた。
そして、私の額をつついて一歩下がる。
「努力と苦労は違う。俺は必要な努力はするが、無駄な苦労はしない。俺は成し遂げるために必要な努力なら何でもする。それを苦労と思ったことは一度もない」
たしかに私は努力をしたことがない。
しなくても困らなかった、というよりも、自己主張を許されていなかったから必要なかったのだ。
私はこの歳までいったい何をしてきたんだろう。
「時間の無駄になる物は置かない主義だ。時間を失う物はたいてい金の無駄だからな」
徹底した合理主義者。
こんな人からしたら、薔薇園なんか無駄そのものとしか思えないんだろうな。
「俺は大学在学中に司法試験に合格し、留学して二十五でMBAを取得した。そのための勉強時間はいくらあっても足りなかった。だが、その努力のおかげで今は金で時間を買えるようになった。金で解決できることは迷う必要がない今の生活は俺に合っている。億単位で稼げるようになったのはさすがにここ数年のことだが、大学以来、右肩上がりに実績を上げてきたことは事実だ」
外したネクタイをハンガーに掛けようとしている男の背中に向けて私は何気なくつぶやいた。
「才能があっていいですね」
褒めたつもりが、男はいきなり振り向いて私に迫ってきた。
「馬鹿にするな」
え?
ネクタイがするりと床に落ちた。
「才能のあるやつなんてこの世には星の数ほどいる。だが、成果を出している人間は一握りだ。その違いはなんだか分かるか」
私は男の剣幕に押されて首を振るのが精一杯だった。
「あんたには分からないだろうな」
あからさまに馬鹿にされてるのに何も答えられない自分も情けない。
「苦労ですか?」
でまかせの答えに、男が口元をかすかにゆがめた。
そして、私の額をつついて一歩下がる。
「努力と苦労は違う。俺は必要な努力はするが、無駄な苦労はしない。俺は成し遂げるために必要な努力なら何でもする。それを苦労と思ったことは一度もない」
たしかに私は努力をしたことがない。
しなくても困らなかった、というよりも、自己主張を許されていなかったから必要なかったのだ。
私はこの歳までいったい何をしてきたんだろう。