先生の愛が激重すぎる件
「どうか彼女とおなかの子供のためにもやり直してください」

「おい。お前、いまなんて!?」

 我が耳を疑った。

おなかの子供?どういうことだ。俺の子だってことなのか?彼女が妊娠しているなんて聞いてない。

俺は男の腕を掴んで起き上がらせた。

吐き気がするくらいに奇麗な顔をしている。明日美はこいつのことがお気に入りだったようだし、

「お前の子供なんじゃねえのかよ」

 その可能性は大いにある。考えたくもないけれど。

「違います。彼女とはそういう仲じゃなかった。あなたの子供で間違いないです。彼女の同僚の先生がそう言っていました」

「同僚の医者?」

「はい。若い、男性の……名前はわかりませんが」

 相原かもしれないと思った。少し前に二人で話をしていたところを見た。それにあいつの実家は産婦人科の病院を経営していると聞いていた。

「そもそもお前がどうしてそのことを知ってるんだ。相原とだって接点があるのはどうしてなんだ?」

 明日美が妊娠していると聞いて今すぐ彼女のもとへ駆け付けたい衝動にかられているのは事実だが、とにかく冷静にならなければと思った。

「端的に言います」

 そういって告げられた事実に俺は怒りを覚えた。明日美と俺を別れさせるためにこの男を仕向けたのが和美だったなんて。

「この事実を明日美さんはおととい知りました」

 明日美は送別会のために相原や同僚の看護師たちとレストランで食事をしていてたまたま和美とこいつの話を聞いてしまったということらしい。

「ショックだったようで倒れてしまって……その場にいた同僚先生から荒木さんの子を妊娠しているんだと聞き、せめてもの罪滅ぼしにあなたに真実を伝えようと思いました」

「……そんな。俺だけ何も知らなかったのかよ……」

 握っていた拳に汗がじっとりと滲んでいるのが分かった。悔しさと情けなさと明日美への申し訳ない気持ちで心がくしゃくしゃだ。

「明日美さんは10時45分の便で実家に帰るそうです。このことは懇意にしている喫茶店のマスターから聞きました。今なら十分間に合います」

 俺はそのまま病院の外へ飛び出すとタクシーを止めた。白衣姿で乗車してきた俺を見て運転手は少し驚いていたようだった。

「すみません。羽田まで急いでいってください。お願いします」

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