先生の愛が激重すぎる件
 車の中で相原に電話をかけるとあまりにも淡々と「全部事実ですよ」と言った。

「お前、隠してた罰として俺の残してきた仕事やっておけ!」

 パワハラだとわめく相原の電話を切って後部座席のシートに背中を預けた。明日美に会ったらなんていえばいいだろう。

やり直そう――は本心だけど彼女は俺に愛想を尽かしてしまっていたじゃないか。いまさら復縁に応じてもらえるのか?仕事優先で彼女のことをほったらかしにした俺を許してくれるのだろうか。

人生でこんなに自信がないことなんてなかった。でも、空港で彼女の姿を見つけた瞬間無意識に走りだしていた。
人目も憚らず大声で名前を呼んだ。きっと恥ずかしいって怒るだろうな、なんて考えながら。

「正臣。なにしてるの、そんな恰好で……」

 保安検査場の前で足を止めた彼女は俺のもとへ駆け寄ると困ったような顔で咎めた。

「明日美、妊婦が走ったらダメだろ! 転んだら大変だ」

「……え。いま、なんて」

 驚く明日美を思いきり抱き締める。

「行くな。行かないでくれ!」

「いきなりなんなの……なんで、きたの……とにかく、離して」

 俺の腕の中から抜け出そうとする明日美を更にきつく抱きしめる。

「いやだ。離したくない」

「バカなこと言ってないで離してよ。苦しいんだってば!」

 そういわれて一瞬ひるんだ。でもお腹だった圧迫していないし、呼吸もちゃんとできている。

俺から逃れるための嘘には騙されてやるつもりはない。

「もうどこへも行かないって約束するなら開放してやってもいいけど?」

 少し意地悪だったかもしれない。けれど明日美を手放したくなかったんだから仕方ない。

「わかった。約束する」

「絶対だぞ? あ、いっておくけどこれプロポーズだからな!」

 腕をほどき彼女の顔を覗き込んだ。すると大粒の涙がぼろぼろとこぼれ堕ちている。

「あ、明日美? ごめん、本当に苦しかったのか? てか、大丈夫か」

 おろおろと情けないくらいに動揺する俺の頬を明日美はパシンと両手でたたいた。

「……違うってば……ばか。ずっと不安だったから、正臣が迎えにきてくれて……ほっとした」

「そっか、ごめんな。一人で全部抱えさせて、不安にさせて悪かった。これからは……」

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