先生の愛が激重すぎる件
 ずっと一緒にいよう。そう言おうとしたのにポケットに入っている病院用の携帯電話が鳴る。

「出なくていいの?」

 明日美は不安そうに俺に聞いてくる。

「いい。俺がいなくちゃ仕事が回らないチームじゃないだろ! それに明日美とこの子以上に大事なものなんて今の俺にはない!!」

 そうだよ。俺がいなくても外科医の代わりなんていくらでもいる。けど、この二人には俺じゃなきゃダメだろ?

 これで俺の気持ちは明日美にしっかりと伝わっただろう。もっと早くこうしておけばよかったんだ。

「これからは仕事よりお前を優先する」

 そう宣言した俺に羨望のまなざしを向けてくれるのかと思いきや……。

「わかったから電話に出たら?」

 さっきまでかわいく泣いていたはずの彼女が急に真顔になってそんなことをいう。

「……は? 今の話聞いてたろ?」

「うん。だけど、仕事放り出すのはなんか違うと思うから電話出て? 主治医に電話繋がらないとほんと困るんだから」

 それから俺は病院にトンボ帰りすることになり、明日美はといういと――、予定通り飛行機で実家へ帰った。

仕事よりお互いを優先したいといいながら、明日美も俺も”患者第一“の考え方からはまだ抜け出さないのだと思い知らされた。

 次の休日、俺は着なれないスーツを着込んで明日美の実家へと向かった。

空港から高速バスに乗りついて1時間ほど。東京とは比べものにならないほど空気が澄んでいてのどかな田舎町といった感じだ。

「あ、いたいた。正臣!」

 ポンと肩を叩かれて後ろを向くとワンピース姿の明日美が立っていた。

「明日美! この間よりもお腹が大きくなったみたいだな」

 お腹に手を当ててからそっと背中に手を回す。久しぶりに感じる明日美のぬくもり。たまらず首筋に唇を押し付ける。すると少し離れたところにいる中年の女性と目が合った。

その女性はどこか明日美に似ていて、はにかみながら軽く頭を下げる。

「なあ、明日美。あそこにいる人って……」

「ああ。私のお母さんだけど? 車出してくれたの」

 慌てて明日美から手を放す。すると「どうしたの?」と首をかしげる。

「お義母さん来てるなら早く言えよな!」

「そういうの気にするの?」

「気にするよ!」

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