先生の愛が激重すぎる件
明日美から野球をしていると聞いていたのでそれぞれにクローブとシューズを手土産に渡すと予想以上に喜んでくれてなんだか俺の方が嬉しくなってしまった。

「弟たち、すごく喜んでた」

 空港までのバスを待つ間ベンチに並んで座り、明日美は嬉しそうにそう言った。彼女の姉としての顔をみたのは今日が初めてだったけれど、その表情は慈愛に満ちていた。家族を大切にしている女性でよかったと思う。

「プレゼント作戦大成功だったか?」

「ううん、そうじゃなくて。正臣の存在が嬉しいんだと思う。大きなお兄さんができたって感じでさ。これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ。また近いうちに来るよ。婚姻届けも一緒に書こう」

 本当は帰りたくないのだけれど、さすがに仕事をさぼるわけにはいかない。また明日美に怒られそうだし……。

「うん。あ、でも婚姻届けは正臣のご両親にご挨拶してからじゃないと!」

「ああ、それはそうなんだけど。前にも言ったけど、母親は他界していて父親は日本にはいないんだ」

 俺の父親は発展途上国で医療活動を行っている医者だ。母親と俺を日本に残して何年も帰ってこないこともあった。母親が死んだ時ようやく帰国したような男なのだから俺が結婚しようと知ったこっちゃないだろう。

「メールでは承諾を得てるし、早く入籍したいんだけど?」

 焦るわけではないが、入籍してどうどうと明日美の夫を名乗りたいし、病院にだってきちんと申告したら休暇だって取りやすくなる。
そしてもう二度と、彼女と離れたくないから俺は法律で彼女を縛ってしまおうと思う。

――なんていったら、自分勝手だと怒るだろうな。

「正臣がそれでいいならいいけど、私は会ってみたいなぁお義父さんに!」

「そうか……。会うのは難しいけど電話してみようか? 掛けたタイミングで出てくれたことないけど」

 時差もあるし通信環境がよくないらしく電話はほぼ不通と思っていていいくらいだ。でもまあ、明日美が望むことは形にしてやりたい。

スマホの電話帳を開くと急に明日美が立ち上がった。

「いきなりどうした?」

「ねえ、待って……緊張してきた。どうしよう」

 そわそわと落ち着かない明日美に俺は笑っていう。

「大丈夫だよ、どうせ繋がらないから。ほら、座れって」

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