先生の愛が激重すぎる件
 明日美を隣に座らせてテレビ電話のボタンを押す。すると数コール後に真っ黒に日焼けした親父の顔が映し出される。

『おお、正臣! どうした?』

 よく通る張りのある声でそう言った。

「久しぶりだな、親父。元気か?」

『元気だぞ。ああ、そうだ。結婚するんだろ? おめでとう』

「ありがとう。そのことで電話した。親父に俺の大切な人を紹介したくてさ」

 スマホを明日美の方へ傾ける。
「は、はじめまして! 久保明日美です」

 明日美の声が震えているのに気付いた。俺は片方の手で彼女の手を握る。

 親父は、『はじめまして。正臣の父です。こんなきれいな人だなんて驚きました。息子じゃなくて私と結婚しません?』そういいながら白歯を見せて豪快に笑った。

「なにいってんだよ、親父。ごめんな、明日美」

 我が父親ながら恥ずかしくなる。女性はとりあえず口説くみたいなの、もう若くないんだしいい加減止めたらいいのに。

「ううん。正臣のお父さんだなって感じ。似てるね」

「はあ? それ、全然嬉しくないんだけど」

 いやたしかに似ているところは多い。母親からもよく『そっくり』だと言われていた。でも、

「俺はこの人のように家族をないがしろにするようなことだけは絶対にしない」

 いいながらスマホの画面に視線を戻すと親父は嬉しそうに頷いていた。

『いい心がけだな、正臣。明日美さん、息子のことを好きになってくれてありがとう。あなたがそばにいてくれたら安心だ』

 そんな親父の横から小さな子供が二人顔を出した。現地のこどもだろう。澄んだ大きな目でこちらを見つめてくる。すっかりスマホを独占されてしまい明日美もどうしていいか分からないといった顔をしている。

「あ、なんか切れちゃった、みたい。かけなおした方がいい?」

 そう言って明日美はそれにスマホをよこした。子供たちが切ったのだろう。

「もういいよ。明日美の事紹介できたし、久しぶりに親父の顔も見れたし」

 正直、あれ以上話すことも見つからない。それに、俺が思っていた以上に親父は誰かに必要とされているのだと改めて知ることができた。

「あ、バスが来ちゃった」

 遠くに見えた高速バスを見つけて明日美が残念そうにつぶやく。俺の手を強く握ると寂しそうにひとつため息を吐く。

「次の休みにまた来るよ」

「え、いいよ。大変だから」

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