先生の愛が激重すぎる件
夜、先生のスマホにLINEを送ったけれど返信はなかった。もしかするとあのままオペに入ったのかもしれない。


 翌日の夕方。ナースステーションに入ると荒木先生を見つけた。その背中はずいぶんと疲れているように見える。

気になった私は早めに日勤のスタッフから申し送りを受けることにした。

「西田さんお疲れ様です。送りもらってもいいですか?」

「久保さん夜勤? 昨日の夜から大変なのよ。緊急オペがあって荒木先生が執刀したんだけどね」

 やはりそうだったのかと思った。荒木先生がERから呼び出されたのは手術が必要な患者さんがいたから。

「まあ、それ自体はよくあることなんだけど……」

 そう言いながら大きなため息を吐く。その表情がみるみる曇っていくのを感じて、

「……けど、なんですか?」

 恐る恐る聞いた。

「その患者っていうのが、あの“椎名ほのか”なのよ」

 椎名ほのかと言えば、アイドルグループを脱退してグラビアアイドルとして活躍している女の子。 清楚でかわいらしくてセクシーで。同性の私が見てもかわいいと思えるような印象しかない。年齢は私と同じくらいだったはず。

「何か問題でも?」

「問題大あり。わがままし放題で手に負えない。患者じゃなければぶん殴ってるわ」

 西田さんは思い切り渋い顔をして見せる。

「ぶん殴るって、これまた物騒な……」

「あはは、まあ、冗談よ冗談」

 椎名ほのかにかかわらずワガママな患者さんはいる。

暴言や暴力も少なからずある。悪意を向けられて腹が立つこともあれば、悲しくなることもある。そんな時私は病気がそうさせていると思う様にしている。

全てを真に受けていたら看護師なんて続けていけない。

 私は電子カルテにログインして、椎名ほのかを探した。けれどその名前はどこにもみつからない。
 
「椎名、椎名……」

「……これよ」

 西田さんが指をさしたのは佐藤和美という三十歳の女性だった。本名と芸名が違うのはよく聞く話だが、年齢も公表しているものより七歳くらい年上。

 だからと言って、私には何ら関係のないことだ。芸能人だろうと患者であることには変わりがないし、この事実を口外することもない。

「なるほど。いろいろあるんですね……」

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