先生の愛が激重すぎる件
ナースステーションへ戻り、同僚に声をかける。
「私も休憩に入らせてもらうね」
「はい。いってらっしゃい」
私は眠気覚ましのコーヒーを飲み、電子カルテを開いた。仕事をしていれば少しは気がまぎれる。
その時ナースコールが鳴った。立ち上がろうとすると、
「あ。久保さん、私行きます。多分トイレなんで介助しないと」
もう一人の夜勤の看護師は足早にナースステーションを出ていった。
私はまたパソコンへ視線を落とす。カチャカチャとキーボードの音が響く中、聞きなれた足音がこちらへ近づいてくる。
「明日美」
そう名前を呼ばれても私は顔をあげなかった。
「……言い訳するつもりはないけど、聞いてほしい」
「仕事中です」
「もちろん知ってる。でも話したい。耳だけ貸してくれたらいいから……」
そう言って先生は勝手に話し始めた。
「最初にこれだけは言っておく。俺が今好きなのは明日美だ。それだけは信じて欲しい。で、本題に入るとだな」
先生は改まったようにゴホン、咳払いをする。
「和美とは以前付き合っていた」
私は黙ってうなずく。さっき森先生から聞かされていたとはいえ、直接荒木先生の口からきくと心がざわざわした。
「こんなところで再会するとは思ってなかったけど、患者として出会ってしまうと避けられねえよな。あいつ、俺の手術がへたくそだから未だに傷が痛む。責任取ってよくなるまで手を握ってろ。じゃないと医療訴訟を起こすっていうんだぜ、参ったよ」
「そんなのただの言い掛りじゃないですか」
私は思わず口を開いた。彼女の暴言に我慢が出来なかった。
「どうして先生が彼女のためにそんなことしなくちゃならないんですかね。もうなんの関係もないのに」
本当なら今夜は自宅で休めていたはずの時間を病室の椅子で過ごさなければならなくなるなんてかわいそうだ。
「……ありがとな、明日美。俺の気持ち代弁してくれて。でも医者として、患者のメンタルごと受け止めてやらなければならない時もあるよな」
先生はそういうと、遠くを見つめた。
私には話さなかったけれど、“椎名ほのか”は心を病んでしまうような問題を抱えているのかもしれない。競争が激しく保証のない芸能界を生きている彼女には想像を絶する苦労があるんだろう。
「……そうですよね。つい嫉妬しちゃったりしてごめんなさい」
「私も休憩に入らせてもらうね」
「はい。いってらっしゃい」
私は眠気覚ましのコーヒーを飲み、電子カルテを開いた。仕事をしていれば少しは気がまぎれる。
その時ナースコールが鳴った。立ち上がろうとすると、
「あ。久保さん、私行きます。多分トイレなんで介助しないと」
もう一人の夜勤の看護師は足早にナースステーションを出ていった。
私はまたパソコンへ視線を落とす。カチャカチャとキーボードの音が響く中、聞きなれた足音がこちらへ近づいてくる。
「明日美」
そう名前を呼ばれても私は顔をあげなかった。
「……言い訳するつもりはないけど、聞いてほしい」
「仕事中です」
「もちろん知ってる。でも話したい。耳だけ貸してくれたらいいから……」
そう言って先生は勝手に話し始めた。
「最初にこれだけは言っておく。俺が今好きなのは明日美だ。それだけは信じて欲しい。で、本題に入るとだな」
先生は改まったようにゴホン、咳払いをする。
「和美とは以前付き合っていた」
私は黙ってうなずく。さっき森先生から聞かされていたとはいえ、直接荒木先生の口からきくと心がざわざわした。
「こんなところで再会するとは思ってなかったけど、患者として出会ってしまうと避けられねえよな。あいつ、俺の手術がへたくそだから未だに傷が痛む。責任取ってよくなるまで手を握ってろ。じゃないと医療訴訟を起こすっていうんだぜ、参ったよ」
「そんなのただの言い掛りじゃないですか」
私は思わず口を開いた。彼女の暴言に我慢が出来なかった。
「どうして先生が彼女のためにそんなことしなくちゃならないんですかね。もうなんの関係もないのに」
本当なら今夜は自宅で休めていたはずの時間を病室の椅子で過ごさなければならなくなるなんてかわいそうだ。
「……ありがとな、明日美。俺の気持ち代弁してくれて。でも医者として、患者のメンタルごと受け止めてやらなければならない時もあるよな」
先生はそういうと、遠くを見つめた。
私には話さなかったけれど、“椎名ほのか”は心を病んでしまうような問題を抱えているのかもしれない。競争が激しく保証のない芸能界を生きている彼女には想像を絶する苦労があるんだろう。
「……そうですよね。つい嫉妬しちゃったりしてごめんなさい」