先生の愛が激重すぎる件
「うお、まじか。明日美が俺に嫉妬? こりゃめでたいぞ! 赤飯焚こうな」
小躍りする荒木先生はすっかりいつもどおりの軽いノリに戻っている。しんみりしていたのは一瞬の事。
「ちょ、待ってください。そういうんじゃないです」
必死で否定した。けれど、この気持ちはどう考えても嫉妬でしかない。元カノに尽くす先生なんてもう二度と、見たくないと思ってしまった。
翌朝の回診で、佐藤和美さんの退院が決まった。私は検温をしに彼女の病室へ向かった。
ドアをノックすると、「はい」と返事がある。
「失礼します」
パソコンのカートを引いて部屋に入ると、佐藤さんは窓際に立って髪をとかしていた。
黒く艶のあるロングヘアは白い肌をより際立たせている。病衣の襟元からは豊かなバストの谷間が見え隠れしていて女の私でも目のやり場に困るくらいだ。
芸能人というものを初めて間近かで見たけれど、醸し出すオーラというか佇まいが一般の私たちとは全く違っていた。
すっぴんでもふさふさのまつげ。きめの細かい肌。整えられたな眉毛。きれいという代名詞は彼女のためにあるのではないかと思うほどだ。
「なに?」
赤い唇が不機嫌そうにゆがんだ。
「……あ。あの検温に伺いました」
「ああ。どうぞ」
佐藤さんはベッドに腰を掛けると、右手を差し出した。私はマンシェットを巻いて血圧を測る。
「お熱も測らせてください」
体温計を差し出すと、受け取って脇に挟んでくれた。測定完了までの時間がやけに長く感じる。私は彼女の方を見ないようにして電子カルテに血圧の数値を打ち込む。
「ねえ。あなたが明日美さん?」
突然名前を呼ばれて、弾かれたように顔をあげた。恐る恐る彼女の方を見る。
「はい、そうですが……」
彼女の大きな目がまるで品定めでもするように私を見ている。
「正臣と付き合ってるの?」
「え……あ、の……」
こういう質問には正直に答えていいのだろうか。先生にも迷惑がかかるかもしれない。
「違うの? だったら私がもらっていいわよね」
そんなことさせない。私は佐藤さんの目を見て、言った。
「付き合ってます。あの、ま、正臣くんと……」
「あらそう。でも、私にかえしてちょうだい」
いったいなんなんだろうこの人は。人を物みたいに言ったりして。
小躍りする荒木先生はすっかりいつもどおりの軽いノリに戻っている。しんみりしていたのは一瞬の事。
「ちょ、待ってください。そういうんじゃないです」
必死で否定した。けれど、この気持ちはどう考えても嫉妬でしかない。元カノに尽くす先生なんてもう二度と、見たくないと思ってしまった。
翌朝の回診で、佐藤和美さんの退院が決まった。私は検温をしに彼女の病室へ向かった。
ドアをノックすると、「はい」と返事がある。
「失礼します」
パソコンのカートを引いて部屋に入ると、佐藤さんは窓際に立って髪をとかしていた。
黒く艶のあるロングヘアは白い肌をより際立たせている。病衣の襟元からは豊かなバストの谷間が見え隠れしていて女の私でも目のやり場に困るくらいだ。
芸能人というものを初めて間近かで見たけれど、醸し出すオーラというか佇まいが一般の私たちとは全く違っていた。
すっぴんでもふさふさのまつげ。きめの細かい肌。整えられたな眉毛。きれいという代名詞は彼女のためにあるのではないかと思うほどだ。
「なに?」
赤い唇が不機嫌そうにゆがんだ。
「……あ。あの検温に伺いました」
「ああ。どうぞ」
佐藤さんはベッドに腰を掛けると、右手を差し出した。私はマンシェットを巻いて血圧を測る。
「お熱も測らせてください」
体温計を差し出すと、受け取って脇に挟んでくれた。測定完了までの時間がやけに長く感じる。私は彼女の方を見ないようにして電子カルテに血圧の数値を打ち込む。
「ねえ。あなたが明日美さん?」
突然名前を呼ばれて、弾かれたように顔をあげた。恐る恐る彼女の方を見る。
「はい、そうですが……」
彼女の大きな目がまるで品定めでもするように私を見ている。
「正臣と付き合ってるの?」
「え……あ、の……」
こういう質問には正直に答えていいのだろうか。先生にも迷惑がかかるかもしれない。
「違うの? だったら私がもらっていいわよね」
そんなことさせない。私は佐藤さんの目を見て、言った。
「付き合ってます。あの、ま、正臣くんと……」
「あらそう。でも、私にかえしてちょうだい」
いったいなんなんだろうこの人は。人を物みたいに言ったりして。