先生の愛が激重すぎる件
周りに誰もいないことを確かめると百八十五センチある長身の彼を見上げた。少し垂れたやさしげな目。それを誤魔化すかのように生やした不精ひげ。
私が看護師として働くこの外科病棟には院内の人気を二分すると言われているイケメン医師が二人いるのだけれど、目の前にいる荒木先生もイケメンの部類に入ると思う。
三十五歳独身。外科医としての腕もいいし、気さくで患者さんからもスタッフからも信頼されている。でも、どこかつかみどころのないゆるっとした性格で合コン好き。特定の彼女を作らないいわゆる遊び人としても有名だ。来るもの拒まず去る者追わずという精神らしい。
「あの、……て、どうしてそんなにうれしそうなんですか?」
私に引っ張り出されてなぜかにやけているその顔をあきれ顔で見上げる。
「ようやく明日美が俺のこと見たなと思ってさ」
「それは……ん? なんで名前で」
さっきの挨拶では、普段通りに久保ちゃんと呼んでいたはず。
「だって昨日の夜、『二人の時は明日美って呼んで』っていったろ?」
にやり、と微笑まれ私は昨夜の言動を思い返す。
ベッドの中で『久保』と名字で呼ばれたことに距離を感じて、私からそう言ったんだった。
低音の先生の声が私の名前を呼ぶ度、鼓膜がくすぐられて頭がぼうっとしたのは忘れたくても忘れられない。
「……た、確かにいった。言いましたね」
「うむ。とにかくだ、いきなり無視はないぜ」
「無視なんてしてません」
「じゃあさっきの態度はなんなんだ?」
先生は私を真っ直ぐに見つめながらジリジリと距離を詰めてくる。
「あれは、その……」
「その?」
「さっきまで同じベッドにいた人と職場で顔を合わせて戸惑ってしまっただけです。無視してすみませんでした」
私は早口でそう伝えた。本当はいいたくなかった。できれば察してほしかったのだけれど、この人にはそういう乙女心を理解するなんて到底ムリだろう。
「あ、そう。なるほどね。てっきりヤリ逃げするつもりかと思ったぜ」
「ヤリ逃げ!?」
そういういのは普通、男が女にするものじゃないの?少なくとも私の認識ではそうだ。世の中には、男性をもてあそぶような女性もいるのかもしれないけれど。
先生の言葉に面食らいつつ、私は慌てて首を横に振る。
「私はそんな女じゃありません!」
私が看護師として働くこの外科病棟には院内の人気を二分すると言われているイケメン医師が二人いるのだけれど、目の前にいる荒木先生もイケメンの部類に入ると思う。
三十五歳独身。外科医としての腕もいいし、気さくで患者さんからもスタッフからも信頼されている。でも、どこかつかみどころのないゆるっとした性格で合コン好き。特定の彼女を作らないいわゆる遊び人としても有名だ。来るもの拒まず去る者追わずという精神らしい。
「あの、……て、どうしてそんなにうれしそうなんですか?」
私に引っ張り出されてなぜかにやけているその顔をあきれ顔で見上げる。
「ようやく明日美が俺のこと見たなと思ってさ」
「それは……ん? なんで名前で」
さっきの挨拶では、普段通りに久保ちゃんと呼んでいたはず。
「だって昨日の夜、『二人の時は明日美って呼んで』っていったろ?」
にやり、と微笑まれ私は昨夜の言動を思い返す。
ベッドの中で『久保』と名字で呼ばれたことに距離を感じて、私からそう言ったんだった。
低音の先生の声が私の名前を呼ぶ度、鼓膜がくすぐられて頭がぼうっとしたのは忘れたくても忘れられない。
「……た、確かにいった。言いましたね」
「うむ。とにかくだ、いきなり無視はないぜ」
「無視なんてしてません」
「じゃあさっきの態度はなんなんだ?」
先生は私を真っ直ぐに見つめながらジリジリと距離を詰めてくる。
「あれは、その……」
「その?」
「さっきまで同じベッドにいた人と職場で顔を合わせて戸惑ってしまっただけです。無視してすみませんでした」
私は早口でそう伝えた。本当はいいたくなかった。できれば察してほしかったのだけれど、この人にはそういう乙女心を理解するなんて到底ムリだろう。
「あ、そう。なるほどね。てっきりヤリ逃げするつもりかと思ったぜ」
「ヤリ逃げ!?」
そういういのは普通、男が女にするものじゃないの?少なくとも私の認識ではそうだ。世の中には、男性をもてあそぶような女性もいるのかもしれないけれど。
先生の言葉に面食らいつつ、私は慌てて首を横に振る。
「私はそんな女じゃありません!」