先生の愛が激重すぎる件
 私がそう言い切ると、先生はしたり顔でこう言った。

「そかそか、そうだよな。今の言葉忘れんなよ」

「……え。ちょ、それってどういう意味ですか?」

「さて、今日も仕事頑張ろうな、明日美」

 先生はくるりと踵を返す。そしてひらひらと手を振ってエレベーターホールの方へ歩いて行ってしまった。

「やだ、なんで答えないで行っちゃうの?」

 追いかけて、問いただそうかと思った。けれどもう始業時刻になる。仕方なくナースステーションへと戻すとすでに朝の申し送りが始まっていた。

「明日美! こっち」

すると同期の及川小春が私を見つけて手招きする。

「今日来てないのかと思った。どこ行ってたの?」

「ちょっとトイレにね」

「そう。もしかして体調でも悪いの?」

 眉間にしわを寄せ本気で心配してくる小春は、同じ女である私から見てもとてもかわいい。少し頼りないところがあるけれど、何に対しても一生懸命でそこがまた男心をくすぐるのだろう。

「小春はかわいいね」

「どうしたのいきなり? やっぱり明日美、今日変じゃない?」

「そんなことないよ。元気元気。さて、今日も張り切って仕事しましょう」

とはいったものの、二日酔いと荒木先生との出来事が尾を引いてあまり仕事が手につかなかった。

……今日は速攻で帰って寝よ。

 仕事が終わると私はパソコンをログアウトしてそそくさとナースステーションを出た。

新人の頃は先輩が帰るまで居残っていたけれど、三年目の今は仕事が終わったらすぐに帰ることにしている。

もちろん、忙しい時は残業もする。でも自分の生活を犠牲にしてまでサービス残業を続けるべきではないと思う。それを美徳とする人もいるにはいるけれど、私には合わない考え方だ。
 
 地下にある更衣室のドアを開けると、昨日の合コンメンバーの一人と鉢合わせた。
 
「明日美おつかれ」

「ああ、里奈。おつかれ」

 彼女は内科病棟で働いている。同期で研修のグループが同じで仲良くなり、ロッカーが隣同士ということもあって顔を合わせれば仕事や院内の噂話ばかりしている。

「昨日ごめんね。あの合コンまじはずれだったわ。しかも、女の子から三千円徴集とかありなくない? ほんと最低」

 里奈は幹事としての責任を感じているようだった。

確かにハズレの合コンではあったけれど、

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