先生の愛が激重すぎる件
 乗り込んだ車内で私は憎まれ口をたたいた。すると先生は「置いていくわけないだろ」と言って私の頭をクシャっと撫でた。

その手の大きさと重みが心地よくて安心する。

もっとしていて欲しいと思ってしまう。

けれど先生の手はすぐに離れていき、ハンドルを握る。そしてマンションとは別の方向へとハンドルを切った。

「どこへいくの?」

「ん? うん、行けば分かるさ」

 そう言って先生は行き先を教えようとしない。車はだんだん都心へと近づいていく。やがて高級ブランドの路面店がひしめく通りのパーキングに先生は車を止めた。

「着いたぞ、明日美」

「着いたって、ここで降りるの?」

「ああ、店そこだから」

 先生が指差した方向には有名なジュエリショップがある。

「なにしにいくの?」

「何しにって、指輪買おうと思って」

「指輪!? なんで?」

 思わず聞いてしまった。だって今日は記念日でも誕生日でもない。それにまだプロポーズしてもらうには付き合って日も浅い。

「なんていうか、俺は言葉足らずなところがあるし、今までのこれからも明日美のこと不安にさせたりすると思う。でも、今までにないくらい本気なんだ。だからそんな俺の気持ちを形にしたくて……だめか?」

 普段は強引な先生に『だめか?』なんて聞かれたら心が揺らがないわけがない。

「だめじゃない。嬉しいよ、嬉しいけど……」

 私は自分の胸元を見た。くたびれたスエットのパーカ。小さな毛玉が出来ている。下は黒のレギンスパンツと履き込んだスニーカー。
近所のスーパーや居酒屋になら躊躇なく行けるけれど、スーツを着たドアマンがいるような店に立ち入れるような恰好ではない。

「また今度にしない? 部屋着だし……」

「……分かった。だったら服を買えばいいだろ」

 言いながら先生は車を降りた。助手席に回り、ドアを開けて傘を広げた。

「ほら、明日美。おいで」

 半ば強引に私を車から降ろすと、近くにある店へと入ってく。

「どれがいい?」

「どれって……」

 比較的カジュアルなブランドではあるけれど、価格は高めであることには変わりない。

私は目の前にあるシンプルなシャッワンピースに手を伸ばした。

ネイビーの張りのある生地は高級感があるし、梅雨時の肌寒い時期に重宝しそうだと思って。

「これにします」

「それだけ?」

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