先生の愛が激重すぎる件
映画館で見る映画は久しぶりだったこともあり、とてもわくわくしていた……のだけれど。

物語の中盤、恋敵の役で椎名ほのかが出てきて物語に集中できなくなってしまった。

彼女の演技が病室で見たものと重なって、あの時の不安の秋もちがよみがえる。

退院して以降、先生は彼女と会っていないはずだけれど、映画のように気まぐれに現れてたぶらかしたりしないで欲しい。そう思った。

映画の後はウインドウショッピングを楽しんだ私たち。夕ご飯も一緒に食べようと思っていたのに小春は「大事な用事がある」と言って帰ってしまった。

「しょうがない。私も帰ろうかな」

 先生には夕食は食べて帰ると言っておいた。でも、独りで食事をするのも寂しい。先生と一緒がいい。『これから帰る』とメッセージを送って私は家路を急いだ。

 家に着くとリビングのソファーで先生は眠っていた。

消え入りそうな寝息。少しやつれたような顔をしている。

ここ最近緊急オペが立て続いていて忙しそうにしていたから疲れているのだろう。

私は寝室から毛布を持ってきて先生の体にかけた。それから音をたてないように夕食の支度を始めた。

買い物をしてこなかったので有り合わせのものでしか作れないけれど、栄養のあるものを食べさせてあげたいと思って。

料理が出来上がってダイニングテーブルに並べ終えた頃、先生が目を醒ました。
「……あれ、明日美? 今日は遅くなるんじゃなかったっけ」

 先生は上半身だけ起こして私を見つめている。

「うん。そのはずだったんだけど帰ってきちゃった」

「早かったね、楽しかったか?」

「うん、とっても。ご飯できたよ、起きて」

 私はソファーまで行くと、先生の腕を掴んで起き上がらせようとした。けれど、先生は私を引き寄せて抱きしめる。

「明日美」

「なぁに?」

「お帰り。会いたかった」

 今朝、別れたばかりだけど……なんて考えながらも結局のところ自分も先生に会いたくて帰ってきたのだ。

「ただいま。私も先生に会いたくて帰ってきたよ」

 言い終わらないうちに先生の唇が重なってすぐに離れる。

「……ん、ねえ。ご飯、作ったから食べよう?」

「ああ、ありがとう。それは早く食べないといけないな」

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