先生の愛が激重すぎる件
 湯波をアレンジした料理や山菜の天麩羅。特産品だという蕎麦とイチゴのデザート。おなかが空いていたこともあり、あっという間に平らげてしまった。

「ごちそうさまでした。おいしかった~」

 笑顔で手を合わせると野原さんもホッとしたように笑ってくれた。

「本当に。美味しかったです。湯葉って京都のイメージでしたけど、日光にもあるんですね」

「そうなの。京都は湯葉。日光は湯波って書くの。豆乳の膜の引き揚げ方にも違いがあってね……」

 旅行雑誌で得た知識を披露すると野原さんはぽかんと口を開けて私を見ていた。

「やだ、ごめん! 興味なかったよね。語っちゃったりして恥ずかしい」

 紅潮しているであろう頬を手でパタパタと扇ぐ。

「いえ、勉強になります。ていうか、久保さんてこういうこと熱心に語るようなタイプじゃなかったですよね」

 野原さんは興味深そうに私の目をじっと見つめる。

「そうかな……?」

 自分的には何も変わっていない気がするけど。

「荒木先生の影響ですか?」

「え、まさか……って、待って! いまさらだけど私、先生と付き合ってるってちゃんとは話してなかったよね?」

 お互い周知の事実として話を進めていたけれど、私は彼女に荒木先生と付き合っていると伝えていなかった。

「はい。でも私は分かってましたよ」

「あ、はは。そうだよね。さすが野原さん」

 野原さんの洞察力には敵わない。まあでもそんなところが彼女の看護師としての強みでもある。

「話し戻しますけど、荒木先生って基本お節介じゃないですか。聞いてないのにあれこれ説明はじめたり、スタッフ集めて飲みに行ったり、で金欠だって騒いだり。退院していった患者さんの事いちいち気に掛けたり……あ、これ褒めてますからね」

「う、うん。わかってる。それが彼のいいところでもあり、悪いところでもあるんだけど……」

 半分悪口のような気もするけれど、全部事実だ。

「私、先生と似てる?」

「はい、すごく。でもいいと思いますよ? 相性がいいんですよ、久保さんと先生は。私も影響されちゃうくらい素敵な人と出会ってみたいです」

 野原さんはそう言って遠くを見つめるとかすかにため息を吐いた。

きっと出会えるよ、なんて私が言える立場ではないけれど彼女ならきっと素敵な男性と巡り合える気がする。

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