先生の愛が激重すぎる件
「さ、お参りに行こう! 東照宮ってパワースポットっていうじゃない。よいご利益貰ってこよう」

 ガイドブックによれば、恋愛成就にもよいらしい。

「そうですね。行きましょう」

 会計を済ませると店を出て、東照宮へと向かった。

木々に囲まれた参道は日常から切り離されたような空間で、緑に浄化された清らかな空気が流れている。

大きな鳥居をくぐり、拝観料を収めて奥へと進み陽明門を仰ぎ見た。

「すごい……」

 それからしばらくは言葉が出なかった。巨大な門にはたくさんの細かな装飾がびっしりと重なり合っている。

龍なのか麒麟なのか、いや、鳥か……。

じっくり見ていたら時間がいくらあっても足りないくらいだ。荒木先生にも見せてあげたかった。

「久保さん? そろそろ行きましょう」

 野原さんに肩を叩かれて慌てて前を向いた。夢中で上を見上げていたせいか首が痛む。


「そうだね、行こう」

 それから私たちは有名なスポットを巡り、日暮れ前に今日の宿へと到着した。

中禅寺湖畔に佇む外資系のホテルだ。

チェックインの時に大切なことに気付いてしまった。

「予約した部屋ベッドひとつしかなかったはず……ですよね?」

「はい。ご予約されて椅子のはキングサイズのベッド、おひとつだけのお部屋でございます」

 いくら大きなベッドでも野原さんに私と寝てなんて言えない。申し訳なくて。

「あの。今からダブルの部屋に変えていただくことって可能でしょうか? もし難しければこのままで構いません」

 迷惑なお願いだということは承知している。けれど、ダメもとで言うだけ言ってみた。

フロントスタッフの女性は「確認いたします」といいパソコンの画面に視線を写す。

「ダブルルームにご変更可能ですが、レイクビューではなくなってしまいます。よろしいでしょうか?」

「はい。大丈夫です!」

 予約する時に確認したが、ほかのどの景観でも悪くなさそうだった。

チエックインを済ませ、私と野原さんは部屋へと向かった。ダークトーンを基調とした落ち付いたインテリア。

「素敵なお部屋ですね」

 言いながら野原さんはベッドにダイブする。

「すみません、久保さん。私少し休みます……」

「大丈夫? お水とか飲む?」

「大丈夫です。ただの車酔いなので少し休めば回復しますよ」

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