先生の愛が激重すぎる件
 久保さんがベッドから起き上がっているのが見えたのでわざとらしくいってみた。すると案の定、先生は驚きの声をあげる。

『はあ? 起きたって誰がだ――』

 先生が話し終わらないうちに終話ボタンを押した。すぐに着信があったけれど私はそのまま電源を切り部屋へ戻るとバッグの中にしまった。

「久保さん、体調はどう?」

「はい、だいぶ良くなってきて……お腹すきました」

「私も、おなかすいたな。ああでも予約の時間までまだあるなぁ……夕ご飯の前にお風呂に行こうと思うんだけど、行く?」

「もしかして、大浴場ですか?」

「うん、そう」

「行きます!」

私と久保さんはお風呂へ向かった。広くてきれいな大浴場のお湯は温泉らしい。ゆっくりとお湯につかり、旅の疲れをいやす。

風呂から上がると身支度を整えて予約していたレストランでおいしい創作フレンチ料理を堪能した。

お酒が進んでしまったせいか、夜はぐっすりと眠れた。翌日はレンタカーを借りて牧場や滝を見に行き、二泊三日の旅行を十分すぎる程満喫した。

「すごく楽しかったです。誘ってくださってありがとうございました」

 野原さんはそう言ってバッグからお財布を取り出した。

「……あの、久保さん……」

「待って! 旅行に付き合ってくれて感謝してるの。お礼を言うのは私の方。だから、いいの。お財布しまって! ね?」

 気を遣わせてしまったのなら申し訳ないと、私は慌ててそう言った。すると野原さんは「いいんですか?」と遠慮がちに言う。

「いいのいいの」

「ありがとうございます。じゃあこれだけでも」

 そう言って見覚えのある袋を差し出した。

「試食して美味しかったので買いました。お漬物です」

 二日目に車で立ち寄った地元で有名だという漬物屋さんで野原さんは店員さんにいろいろ聞きながら買い物をしていた。

「荒木先生と一緒に召し上がってください」

「わあ、ありがとう! 遠慮なくいただきます」

 野原さんの分もあると聞いて私は遠慮なく受け取ることにした。

「はい。ぜひ。あ、あとこれは電車の中で食べようと思って買ってきた羊羹と日本酒です!」

 久保さんはそういうとテーブルに並べる。

「昼間から飲むの?」

 まだ十五時を過ぎたばかり。

「いいじゃないですか、日中に飲んじゃいけない理由なんてあります?」

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