先生の愛が激重すぎる件
「ううん、平気。ご飯美味しかったからぜんぜんきにしてない」

 食事がおいしかったのは本当。

それに私はそこまで合コンに期待していない。どちらかと言えば、仲のいい里奈に誘われたから参加しているというだけだ。

「明日美やさしい~今度こそいい男そろえるから埋め合わせさせてね」

「うん。また誘って」

 ガコンと扉を開け、私服を取り出すと里奈が目ざとくそれを見つけてきた。
 
「あれあれ、そのワンピ昨日と同じやつじゃん! もしかして、朝帰り?」

 図星を突かれ、必死で動揺を隠す。

「ううん。そんなんじゃなくて、寝坊して脱いだものをそのまま着て来ちゃった感じ、あはは……」

「なるほど。でも明日美らしくないね。いつもきちんとしてるし、寝坊とかもしなさそうじゃん」

 里奈が言うように、私は割ときちんとした生活を送っている部類の人間だと思う。昔からから真面目、きれい好き、きちんとしている。そう言われることが多くて、自分でもそうしなければいけないと思って生きている。

たまに息苦しくなることはあるけれど、だらしないよりはよっぽどいい。

「明日美って仕事も生活も抜け目なしって感じだもん。憧れちゃうな」

「買いかぶり過ぎだよ! 私だってやらかすことあるよ」

 酔った勢いで荒木先生と寝てしまったり……とか。

「本当に? そんな明日美見てみたいわーじゃ、お先~」

 早々に着替えを終えた里奈は足早に更衣室から出ていく。

ヒップラインを強調したタイトスカートに、栗色に染めた長い髪。昨日の合コンでは里奈が男性の視線を集めていた。
私に憧れてるだなんて言っていたけれど、里奈はそのままでいい。十分魅力的だ。

通用口から外に出ると辺りはまだ薄暗く、ずいぶんと日が伸びたのだと感じた。私の住むアパートは病院からバスで十分程の所にある。
病院の入り口にバス停があり、乗り降りも便利だ。停留所のベンチに座り読みかけの文庫本を取り出す。
しばらくすると目の前に一台の車が止まった。バスではないのは明らかだ。
顔をあげずにいると、クラクションが鳴らされた。

「おーい、明日美」

 いきなり名前を呼ばれて顔をあげると、黒いSUV車の運転席の窓から荒木先生がこちらを見ている。

「やっとこっち見たな」

 私と目が合うと、先生は嬉しそうに笑った。

「荒木先生?」

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