先生の愛が激重すぎる件
 クリスマスも、年越しも、なんの邪魔もされずに過ごせた。
 
 しかしある日の深夜。寝室のベッドで眠っていた私は、先生のスマホの音で起こされる。

「……んー、正臣。電話鳴ってるよ」

 耳元でなり続けるその音を避けるように背を向けた。

「わりい、マナーモードにするの忘れてた……」

 寝ぼけた声でそう言いながら先生はスマホを手に取った。けれどいっこうに出ようとしない。やがて着信音が止んだ。私は盗み見るように先生の方を見た。光るスマホの画面を険しい表情で見つめている。

「誰からだったの?」

「……和美からだった。起こしちゃってごめんな。寝ようか」

 そう先生が言った直後、今度はLINEの着信があった。しかも連投しているようで、”ピコピコ“と鳴り続けている。その音があまりにも鳴りやまなくて私は得体のしれない恐怖を感じてしまった。

「なんなんだよ、いったい」

 先生はアプリを開こうとする。私は慌てて止めた。

「待って! 既読にしないで」

「なんで?」

 きょとんとする先生に私はイラッとしてしまった。

既読を付けたら起きているとバレてしまう。寝ているふりでもしておかなければ、先生が反応するまで連絡は続くだろう。

「なんでって……分からない?」

「うん、ごめん」

「既読つけてハイ終わりってわけにもいかないでしょ? やり取りするつもり?」

「いや、そんなつもりはないけどな」

 少し困ったようにポリポリと穴の頭を掻く。

 そう言いながらもしつこく連絡が来たら対応してしまうんだろうなということが容易に想像できる。

「そもそもこんな夜中に連絡してくるなんて非常識だよ」

 さっき時計を見たら三時前だった。芸能人なら普通に起きている時間なのだろうか。知らんけど。
 
「それにもし急病だったらスマホですらすらとテキスト入力できるはずがないし。連絡とるなら昼間にしてくれる?」

 私のことを冷たい女だと思うだろうか。

「そうだな。明日美の言うとおりだ。もう連絡は取らないよ。いま電源切った。もう寝よう。起こしてごめんな」

 先生は真っ暗になったスマホをサイドボードに伏せ置くと私を抱き寄せて目を閉じた。けれど私は朝まで眠ることができなかった。

彼女のような人間を私はひとり知っている。貴重な中学校生活をその子のために過ごしたと言っても過言ではない。

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