先生の愛が激重すぎる件
どおりで身長も高くて骨格もしっかりしているわけだ。髪は長くて顔も中世的で女性に見えなくはないけれど、声だって……。

「水を……」

「え?はい。お水ですね」

 部屋の中を見渡すとウオーターサーバーがあった。キッチンの棚からコップを持ってきて注ぐ。

「どうぞ、こぼさないようにのんでください」

 その人が起き上がるのを待ってコップを口元までもっていく。

間近で見ると、本当にとてもきれいな顔をしている。

ギリシャ彫刻のように端正で透明感のある目鼻立ち。きれいな肌に艶やかな黒髪がとてもよく似合っているし、着ている白いオーバーサイズの襟付きシャツはシンプルなのに品よく着こなしていた。

「飲めました?」

「……はい。めまいも治まったみたいです」

「そうですか!……よかった」

 治らないようならこれから受診できる病院を探そうかと思っていたところだ。

「普段からめまいをよく起こされるんですか?」

「いえ。健康だけが取り柄のはずなんですが、時差ボケのまま仕事に追われていたのが原因かと」

「時差ぼけ? お仕事はお忙しいんですか?」

 どんな仕事をしているのか気になったが、なんとなく聞けなかった。

「ええ。でも、今日で終わりましたからしばらくはゆっくりできそうです」

「よかったですね。ゆっくり休んでください。体調、大丈夫そうなら私はこれで失礼します」

 自ら上がり込んでいしまったが、曲がりなりにも男性の部屋だ。早く帰らなければ。

「ええ、そうですね。いろいろとご親切にありがとうございました。……そうだ。お礼をしないと」

 そう言ってその人はデニムのポケットから財布を取り出す。

「いいですって。お金なんていただけません」

 両手を振ってそういと、男性は困ったように眉尻を下げた。

「……ごめんなさい。日本円は手元になくて。あとでもいいですか?」

 ――え?違った!? めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。

「やだ、ごめんなさい。そんなつもりで言ったんじゃないんです。お金はいただけません」

 必死で否定すると男性はクスクスと笑った。その笑い方も上品で、豪快に笑う先生とくらべてしまう。

「わかりました。でもお礼はさせてください。僕の名刺を渡しますからお時間があるときにでもご連絡いただけると嬉しいです。今日は本当に助かりました。ありがとう」

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