先生の愛が激重すぎる件
バッグはハイブランドのミニショルダー。ショートヘアに似あうといわれて購入した大ぶりのピアスを付け、七センチヒールのパンプスを履いた。

正直乗り気ではなかった。でももし今逃げても明日病院で顔を合わせる。どうせ逃げられないのなら、行くしかないのだ。

外に出ると、先生が立っていた。

ネイビーのジャケットにインナーは白いTシャツ。ボトムスはデニムで足元はスニーカーだ。

シンプルで清潔感のあるファッションはとても好感が持てる。

「お待たせしちゃいましたか?」

 駆け寄って尋ねると先生は首を左右に振った。

「いや、俺も今着たとこ。じゃあ行こうか。通りでタクシー拾おう」

 大通りに出てすぐにタクシーに乗れた。先生は行き先を告げる。

そこは私が行きたいと言っていた創作和食の店だった。高級且つ大人の居酒屋というイメージで、人気ゆえに予約があまりとれない。

私は驚いて先生の顔をみた。

「昨日、行きたいって言ってたろ。昼に電話したら予約取れるっていうから絶対に明日美を連れて行こうって思ってさ」

「そうでしたか……」

 正直よく覚えていない。バーで話したのかもしれない。
酔っ払いの私の話を覚えていてくれてたなんて驚いた。おそらく仕事も急いで切り上げてきてくれたのだろうし。

「ありがとうございます。先生って優しいんですね」

 先生の目を見てそう伝えると、照れたように鼻の頭を指で掻いた。
その表情やしぐさがどこかとてもかわいらしく見えて、不覚にも、目の前のガタイのいい髭の年上男に母性を感じてしまった。

 店に入るとカウンター席に通された。目の前には寿司屋のようなショーケースがあり、食材が並んでいる。

店内は気をふんだんに使った和の雰囲気で、スーツ姿の男性や女性が多い。思わず自分お服装で浮いてしまわないかが気になった。

「明日美、何食べる?」

 荒木先生から渡されたメニューを見て、面食らった。普通の店ならあるはずの値段が記載されていない。
 
 馬刺しにウニ、和牛ステーキ、てんぷら。海鮮丼。

――食べたいものを好きなだけ食べたら支払いできないかもしれない……。

「私はウーロン茶とこのさつま揚げを……」

「どれ、さつま揚げだけ?」

「はい……」

「それじゃ腹いっぱいにならないだろ! 俺が頼んだもの食べろよ、いいな」

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