先生の愛が激重すぎる件
 そう言って先生は私をにらんだ。

彼には私がただのワガママな彼女に見えているんだろう。これ以上話をしても無駄だ。

「……もういい」

 私はそう言い捨てて踵を返す。

「おい、明日美。もういいって、どういう意味だよ」

 先生は私の肩を掴んだ。でも私は振り返らずに言う。

「そのままの意味だよ。だって、今夜は帰ってこれないんでしょ? ううん、今夜も、だよね?」

「それは、仕事が……」

「分かってるよ。正臣は仕事が大事なんだよね。ねえ、気づいてる? 私たちもうずっとキスもしてない……これって付き合ってる意味あるのかな?」 

 世の中には“気持ちさえ繋がっていれば会えなくても大丈夫”なんてカップルはたくさんいるのだろう。もちろん男女の関係がなくてもいいと思う人も。以前の私ならこういう考え方もありだな、なんて思っていたし自分がその立場になったら受け入れられるものと思っていた。

でも違ったみたいだ。

好きな人とは一緒にいたいし、同じ時間を過ごしたいと思う人間なんだ。

「……お疲れさまでした」

 そうとだけ言って私は踵を返した。
 もしかしたら帰ってきてくれるかもしれない――なんて心のどこかで期待していた。

けれど、二十一時を過ぎても連絡すらない。

以前は帰宅できないときは仕事の合間を縫ってLINEや電話をしてくれていたのに。

「もう待たないからね……」

私は作った料理とケーキの箱をもってエレベーターに乗った。

――ピンポーン。

インターフォンを鳴らすとヴェガの吠える声が聞こえる。少ししてガチャリとドアが開いた。

「……明日美!? どうしたの」

 鷹藤さんは驚いたようにそう言ってドアの補助ロックを外してくれた。

「いきなりでごめんなさい。お礼の件、まだ有効ですか?」

 言い淀まないように、少し早口でそう言った。すると鷹藤さんは優しく微笑んで

「もちろん」

 と言ってくれた。

「よかった! もし嫌じゃなかったらこれ食べてくれませんか? 作ってきたので」

 私は中身が見えるように紙袋を広げた。たくさん詰め込んできたのでずっしりと重い。

「……ええと」

「……あ。いいんです。手料理食べられない人もいますし断ってくれて全然大丈夫なんで!!」

 急に押し掛けた上に困らせてしまったようで、なんだか申し訳ないことをした。

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