先生の愛が激重すぎる件
「なんか、ごめんなさい」

「ううん、そうじゃなくて。明日美が料理してきてくれたんじゃお礼にならないでしょ?」

「いえ、そんなことないです。ひとりじゃ食べ切れなくて、手伝ってもらえたらすごく助かるんです……」

 ひとりで食べ切れないと言ってみたが、ここには二人分詰めてきた。おすそ分けということではなく、全部引き取ってもらうつもりでいる。迷惑を承知の上だ。

「わかった。いただくよ」

「ありがとうございます!」

「そのかわり、明日美も一緒に食べることが条件だよ。だって、かなりの量だし、僕一人じゃ食べられないよ」

「……はは」

「それに」そういって鷹藤さんは私の目をじっと見つめる。少しグレーがかった瞳に見つめられるとすべて見透かされたような気持になる。

「このまま明日美を部屋に帰しちゃいけないきがするな。だって、今にも泣きだしそうな顔、してるから」

 そう言われて思わず動揺してしまった。否定しようにも言葉が出てこない。

「図星かな。僕でよければ話し聞くよ。どうぞ、入って」

 そう言って鷹藤さんは玄関のドアを大きく開いた。

「……でも、ご迷惑じゃ」

「大量の料理を置いていかれる方が迷惑だよ。それよりも、ヴェガが外に出ちゃうから早く入って、さあ」

 いまさら帰りますだなんて失礼過ぎて言えない。もしもの時は……いや、もしもの時なんてきっとない。そんなことをする人だなんて思えないから私はここへ来たんじゃないのか。

「失礼します」

 玄関へ入るとヴェガがしっぽを振りながら飛びついてきた。私の顔を見上げた後、紙袋をクンクンと嗅ぎ始める。

「ヴェガ、行儀が悪いぞ」

 鷹藤さんはヴェガの鼻先を軽くつかんで諭すようにそう言った。するとヴェガは素直に私から距離を取る。

「明日美、今のうちに靴脱いじゃって」

「あ、はい。ありがとうございます」

 私は荷物を床に置き、靴を脱ぐと端にそろえた。

「ヴェガはローストビーフなら食べられますかね? ソースは別で持ってきたのでかかってませんし」

「ありがとう。よかったな、ヴェガ。明日美の手料理だってよ!」

 ヴェガはその意味が分かったかのように嬉しそうに尻尾をフリながら「ワン」と鳴いた。

「ねえ、明日美はワインのむ?」

「いいんですか?」

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