先生の愛が激重すぎる件
 ケーキを予約する時、プレートのメッセージをどうするか聞かれ、何も考えずに『Happy birthday Asumiでお願いします』って言ったんだった。

「おめでとう、明日美。君の誕生日を祝えてうれしいよ。ありがとう」

「ありがとうだなんてそんな。私の方こそ、一緒に過ごしてくださってありがとうございました。鷹藤さんがいなかったら、今頃部屋で……独りで……あれ、やだ、ごめんなさい」

 勝手に涙があふれてきて止まらなくなってしまった。早く泣き止まなければと思えば思うほど、止めることができない。

「明日美。こっちにおいで」

 鷹藤さんは手招きして自分の隣に座るように指をさす。私はゆっくりと立ち上がり、彼の隣に座った。

「泣きたい時は泣いていいんだよ」

 そういってまるで優しく包むような曲を弾いてくれた。私は鷹藤さんの演奏を聴きながらひとしきり泣いた。けれど気持ちがはれることはなかった。

「今日はありがとうございました。遅くまですみません」

 気づけば夜中の零時を過ぎてしまっていた。

「またいつでもおいで。お酒とピアノだけはあるから」

「それじゃあまるでピアノバーみたいですね」

「あはは、違いない。ヴェガも明日美の事気に入ったみたいだし、来てくれたら喜ぶよ、な」

 「ワン」とヴェガが鳴き、鷹藤さんは慌てて玄関のドアを閉める。

「今日はありがとうございました」

 頭を下げ、到着したエレベーターに乗り込もうとすると、鷹藤さんが乗り込んでくる。

「送っていくよ」

「大丈夫ですよ、同じ建物内ですし」

「うん。でも心配だから」

 断る必要もない気がして私は鷹藤さんの厚意に甘えることにした。

「じゃあ、お願いします」

 エレベーターの中で、鷹藤さんは今制作中のアルバムがあるのだと話してくれた。

「曲選びに悩んでてさ、明日美の意見聞かせてよ」

「私なんかじゃ分かりませんて」

 流行りの曲すら疎い私に鷹藤さんのアルバムの曲を選ぶお手伝いなんてできるはずがない。すると鷹藤さんは首を左右に振る。

「違うんだ、分からないからいいんだよ。たくさんの人に聴いてもらいたいからこそ、音楽に精通している人たちばかりで決めたらいけないと思ってる。明日美のように素直な感性の持ち主が僕には必要なんだから」

「私でよければ、ぜひ」

「ありがとう、よろしくね」

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